双子が生まれて、三週間ほどが経った頃だった。
病院へは、毎日通っていた。平日は昼休みや仕事帰りに寄り、休日も顔を出した。
「声をかけてあげてください」
看護婦さんに、そう言われていた。
保育器の中の双子に、声が聞こえているのかは、わからなかった。それでも、面会のたびに声をかけた。
帰り際の言葉は、いつも決まっていた。
「おーいきたよー、パパだよー、またくるねー、またあしたねー」
看護婦さんの許可をもらって、背中やおなかに、そっと手を添えることもあった。そうすると安心するから、と教えてもらった。
通うことに、意味があって通っていたわけではなかった。無我夢中で、何も考えていなかった。
ミルクが止まっていた
その日、弟はミルクがストップになっていた。輸血をしている、と聞いた。詳しい説明は、なかった。
兄は処置で覆われていて、様子がわからなかった。
明日、先生から話を聞きたい。看護婦さんに、そう伝えた。
辛い話を聞くことになるかもしれない、と思った。
帰り際
その日も、帰り際に、いつもの言葉をかけた。
「またくるねー」
そのタイミングで、弟が目を開けた。
目が開いたのは、この日が初めてではなかった。声が聞こえているはずも、なかった。目も、まだ見えていない時期だった。
偶然だった。
それでも、ぐっとくるものがあった。
なんでもいいから、ミルクを飲めるようになってほしい。
その日は、そう思いながら帰った。